藤谷美貴雄写真展
MEANINGS 2004
「愛する人のための三つの病についてあるいは意味の不在と無意味の存在について」
前回2004年6月の個展より5ヶ月。さらに進化・発展。その勢いは止まることを知らない。
偉大なるフォトギャラリーアートスペースモーターにて。
2004年11月22日(火)より11月30日(月)まで開催
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二つの部分からなる表題について
「愛する人のための三つの病について」
何となくスキャンダラスな風情があり大変気に入っていて、今回の写真展は内容より先に表題が決まっていました。
人は愛する人のために三つの病を与えることができる。一つは急性疾患とも言うべき激しく燃え上がり時には直ぐさま死に至る病。二つめは慢性疾患であって
何ごともないかのように幽玄と静寂の中で永遠に続き森羅万象を満たしついには死に至る病。三つめは時間の流れの中ですでに決定され光と闇の中を死に至る
病。
「意味の不在と無意味の存在について」
2001年6月30日に書いた次のShort-Shortによります。
私は厚さ20cm、内寸1.2m×1.2m×1.2mの鋼鉄製の箱を作ってその中に入り、完璧に蓋をして太平洋の一番深いと言われている所に放り込んでも
らった。ゆっくりと落ちて底に着いた。静かで何か不思議な喜びがあった。三日目になると私はここにいることに飽きていた。私はすでにスーパーマンのような
ものになっていたので目から特殊光線を出して鋼鉄の箱を溶かし外へ出た。一気に海面まで飛び上がると夕日が落ちる時であった。私は何故か涙が止まらなかっ
た。
私は厚さ5cm、内寸1.2m×1.2m×1.2mの木製の箱を作って表面に彫り物をし、漆で仕上げ、金箔を張り、その中に入った。完璧に蓋をして悪霊
の住む森に置いてもらった。日が暮れて暫くすると雨が降ってきた。雷が鳴り箱の上に彫られた竜が光った。巨大な悪霊が現われ箱を叩き潰した。
そして悪霊が言った。「今度はもっとしっかりした物を作ってこい」
次の日、私は厚さ20cm、内寸1.2m×1.2m×1.2mの鋼鉄製の箱を作ってその中に入り夜を待った。直ぐに巨大な悪霊が現われ、一目箱を見るな
り口から特殊光線を出し箱を溶かした。私は直ぐさま巨大化し目から特殊光線を出し防戦した。明け方まで戦いは続いたが決着はつかなかった。やむなく私たち
は抱き合い固い握手をして別れた。
ある朝、私が新聞を開くと一ヶ月の後に宇宙人が地球を攻撃すると書いてあった。私は急いで厚さ1m、内寸12m×12m×12mの超合金製の箱を作って
家財道具を入れ攻撃に備えた。宇宙人のやることは完璧で無駄が無く、地球は焦土と化し人類は滅亡した。そして宇宙人は鼻から特殊光線を出し私の箱を溶かし
始めた。私は目から特殊光線を出して防戦し、反撃し、次々と宇宙人を倒し、ついには宇宙人のすべてを抹殺した。
すると光り輝く神が現われこう言った。「生めよ。ふやせよ。地に満ちよ」
何日かすると私は妊娠し暫くすると子が生まれた。何年かすると子は増え、その後また地上には人が満ちた。
その小さな箱にはオルゴールが入っていた。この茶色の木の箱の裏には昭和二十一年十月四日と書いてあった。私は毎年十月四日になるとそのオルゴールを鳴らした。曲はシューマンのトロイメライである。
昭和四十一年十月四日、私が二十歳になる日であった。私はこの箱を壇上に置き、出生について語ろうとしていた。
「今から二十年前のことであります。私はとある病院の玄関にこの茶色の木の箱と共に小さな毛布で包まれ置かれていました。小雨の降る初冬の夜のことでし
た。だから私は両親を知りません。でも、ここにおられます皆様方のおかげで二十歳の日を迎えることができ本当に感謝しております。・・・・・最後に、皆様
方にぜひこのオルゴールを聴いていただきたいと思います」
そして箱を開いたその時であった。
中から巨大な宇宙人が現われ、耳から特殊光線を出し攻撃してきた。私はすぐさま目から特殊光線を出し反撃した。宇宙人は私の反撃により黒焦げになって動きを止め、危機を回避することができた。
けれども、あの宇宙人が私の母であることなど分かるはずもなかった。
今日は母の十七回忌である。このよく晴れた秋の日に私はそのオルゴールを激しく鳴らした。ダーン、ダンダンダンダダーン、ダダ、ダダダダダダダダダダダダーン・・・。
その女は手品師であった。箱に5人の裸の美女を入れ、クレーンで吊るしてあった重さ100tの鉄の塊をその箱の上に落とした。箱は見事に潰れたが、美女
も見事に潰れてしまった。手品は失敗であった。女は業務上過失致死罪の容疑で逮捕され取り調べの後、起訴され裁判となった。その女にとって失敗など有り得
なかったから、これは明らかに何物かの力によるものであった。
ある夜、その女は頭の上から特殊光線を出し、拘置所の天井を壊して宇宙の彼方の星へ帰った。その星では巨大な悪霊が発生し、平和を乱し、世界が混乱して
いた。その女は直ぐさま丈夫な箱を作りその表面に特殊な呪文を書いた。そしてその中に入り巨大な悪霊のいる洞窟の前に置いてもらった。夜になると巨大な悪
霊が現われその箱を叩き潰した。その女は頭と目から特殊光線を出し反撃したが、その巨大な悪霊には見覚えがあった。その女と悪霊は再会を祝し、抱き合い、
固い握手をした。そしてその後、星の平和は戻った。
私がその魅力的な箱を手に入れたのは砂漠のバザールであった。厚く堅い木で出来ていて、回りには彫刻が施してあり、幾つかの石が埋め込まれていた。中身
は空であったが重く、暫く躊躇していたがちょうどバッグに入る大きさであったので、思いきり買ってしまった。
さて、私は宇宙人であったから目から特殊光線を出して箱を調べて見るとそれは案の定、生物であった。三日程風呂場でふやかすとそれは果たして絶世の美女
になった。箱は女になった。私は箱女に夢中になり気がつくと一ヶ月が経っていた。次に気がつくと二ヶ月が経っていた。そして女は五人の子を生んだ。最初は
箱であったが暫くすると人間の子になった。次々と女は子を生んで二年もすると二十人になった。子供たちは皆良い子で親孝行であり私たちは毎日を笑って暮ら
した。
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